森川智之/塩沢兼人プライベート・コレクション

間の楔(取り扱い注意)(NOTES)

(1997/6/1現在)


「間の楔」(カセット)

ドラマ (株)サン出版 89.5.31発売 2000円

やっと入手できました。とってもうれしい。 カセットJUNEは、今ではもう通常の手段では手に入らず、 中古を見つけるより他に方法がないようです。

イアソンがえらく人間的です。もともとブロンディーというのは人工体なので、 あまり感情を出さないはずなのですが、あんなにしゃべっていいのだろうか、 などと思っておりました。
そりゃ、愛する方のお声がたくさん聴けるのはうれしいのですがね。

原作は同列には並べられないけれど、CDやビデオを含めて、 出来としてはこのカセットがいちばんいいと思います。 60分ですが、脚本も無駄なくまとまっていて、声優の演技も素晴らしいし、 長すぎもせず短すぎもせず、充分に堪能させてくれます。

特に、最初から最後まで無表情だったビデオのイアソンに比べて、このカセットでは、 兼人さんがとても表情豊かに演じてくださいます。兼人さんがお好きで、 このテの話に拒否反応を持たない方には、是非聴いてもらいたいと思う作品です。
「間の楔」というお話を離れても、 オーディオドラマとしてかなり質の高いものだと思います。


「間の楔 DARK-EROGENOUS」(CD)

ドラマ (株)マガジン・マガジン JCD-931101 93.??.??発売 3200円(通販専用・送料込み)

カセットをそのままCDにしたのではなくて、新しく録音し直したものです。

リキがイアソンのペットになってから、エオスを出て行くまでが描かれています。 ペットになるまでのいきさつもありませんし、完結もしていません。 だからカッツェもガイもいません。ファニチャーのダリルがよい味を出しています。
流れとしては、ビデオ1巻目で描かれなかった部分になると思います。 といっても、ビデオ1巻目のうちCDより前を描いたのはほんのちょっとなので、 つまり、(ビデオ1巻目の冒頭近辺ちょっと)、CD、ビデオの1巻目、 ビデオの2巻目(「完結編」)、で全体になる感じです。

20トラックあるうち、4トラックくらいは、イアソンに意見するラウールのシーンです。 イアソンはもともと人工体なので、あまり感情を表に出しません。 だから兼人さんもとても抑えた演技で、 「表情をつけるな」と言われた(らしい)「アンジェリーク」のクラヴィスと、 えらく似ています。声のトーンも同じくらいです。
それに速水奨が「意見する」わけで、もう、台詞の内容自体を無視すれば、 クラヴィスに意見するジュリアスそのものです。 イアソンがいくら意見されてもきかないところはクラヴィスだし。 違うのはラウールがジュリアスみたいに激昂しないことくらいですね。

関俊彦の喘ぎ声満載なところが何とも。 みんなが求めているのはそれなわけ? …鈴は違うな。
そういう点ではビデオのほうがさりげなくてよかったなあ。 ビデオでもちょっと多いんじゃないの、とは思ったけど。
それを除けば、なかなか「人間」が描かれていて、 特にイアソンの無表情さが見えないぶんイメージで補えるので、 CDのほうが鈴は好きです。苦悩するイアソン、なんてのまであるし。

CASTリキ関 俊彦
イアソン塩沢 兼人
ラウール速水 奨
ダリル置鮎 龍太郎
ミメア篠原 恵美
エニフ柴本 浩行
カイル中村 秀利
ペットA嶋村 薫
ペットB熊井 統子
STAFF制作宮坂 五十四
原作・脚本吉原 理恵子
脚本監修花枕 桃次
企画JUNE編集部(佐川 俊彦・清水 潤子)
企画協力浜田 悠生
制作(株)マガジン・マガジン
イラスト道原 かつみ
デザイン小倉 敏夫
印刷TOPPAN PRINTING CO., LTD.
キャスティング協力81プロデュース
音響スタッフ音楽監督岩浪 美和
音響プロデューサー中野 徹
音響効果佐々木 純一(アニメサウンドプロダクション)
録音調整平野 延平・嶋津 ゆきお
録音スタジオセントラル録音・TDKスタジオ
マスタリングスタジオサンライズ
演技事務中村 明子
音響制作HALF H・P
音楽スタッフ作曲中田 雅敏・矢吹 俊郎・大平 勉・本間 昭光
編曲中田 雅敏
ディレクター寺沢 久紀(TDK Records)
レコーディングエンジニア嶋津 ゆきお

「間の楔」・「間の楔 完結編」(ビデオ・DVD)

各60分程度。1巻目は50分くらいしかないけれど、デッサンから、色付け、 絵コンテなどのMAKINGがおまけでついてます。
[追記] 「間の楔」DVD版には、ビデオ版の2作と、設定集・絵コンテなどの映像特典、 さらにイタリア語吹き替え(イタリアで発売されたもの)も収録されています。 パッケージは、普通のDVDケースの他に、 「間の楔完結編」の復刻台本(塩沢さんが実際に使われたものが原本なので、 赤字書き入れやページの折りも再現)がセットになった、箱入りとなっています。

イアソンがちゃんと鈴好みに綺麗でした。 ただ、目の冷たさを表現しているのが無表情さだけなので、 もっと本当の「冷たさ」とその裏に隠された暖かさを描いてくれていたらよかったな、 と思いました。
動きの激しいシーンより、イメージショットみたいなシーンのほうが、 ずーーーっと綺麗で素敵でした。作画技術の問題でしょうか。

1巻目は、リキとイアソンの出会いの描写の後、リキがスラムに戻って来て、 またイアソンのもとに戻るまでです。 「耽美系」やSFというより、ケンカのシーンの多い、暴走族アニメのようでした。 脚本もイマイチのようで、ちょっと残念でした。

その点、2巻目のほう(「完結編」)がよくできています。へえ、と思って見たら、 2巻目は脚本も原作者の吉原理恵子でした。1巻目は違います。 ラストシーンは、とても淡々としているんだけど (だいたいイアソンがどんなに激しいシーンでも淡々としているから)、でもせつない。 あ、あれ、ラストシーンじゃありませんね。ガイのシーンが後にあったんだ。


「間の楔」(本・原作)

原作は、ビデオを見る前に、CDやドラマを聴く前に、読んでしまいました。
絵や声が入るとイマジネーションを限定されるから、 先に原作を読んでいると違和感を感じることが多いので、 ビデオやCDを見る/聴くとわかっている場合は、 先にイメージをせばめるものから接するようにしています。 だから、いずれビデオやCDを購入することは決めていて、 まだ手にしていない状態のときには、読むつもりはなかったのですが、 ちょっとさわりだけ、と思って読み始めたらやめられなくなりました。
結局、やっていたゲームもやめて、流していたCDも止めて、3時間。
この感想は、ビデオやCDに接する前に感じたものを中心にしています。

これは、鈴がそれまで接して来たこのジャンルのものとは、格が違いました。 それまで読んでいたのは、多少、尋常でない世界に浸る程度で終わりですが、 これは完膚無きまでに叩きのめされます。
官能シーンだけを取り出せば、もっと露骨で過激なものはいくらでもあるでしょう。 この作品の恐ろしさは、そんなものではありません。

人と人とのかかわり、屈折した愛、コンプレックスと愛情の裏返しの憎悪、といった、 人間の感情の根元にあるどろどろしたものが、 美しいなどという言葉とはまったく無縁な世界で描かれます。
どんなに「美しい」と形容してあっても、中身の醜さを隠すためだけの表面的な美しさ、 そして恐ろしさや残酷さを強調するための美しさで、決して本当に美しくはありません。 最後まで。
汚い、気持ち悪い、醜い、恐ろしい、そういったものだということがわかっていて、 それでもなお目を離せない。

文章は稚拙なところが目につきます。視点も定まらないので、とても読みにくく、 何回も読み返さないと何を言いたいのか、 何がどうなっているのかわからないところもあります。 特に状況や人間関係が把握できていない、最初のあたりでは、 意味不明で数ページにわたって読み直したところもあります。
10年も前の作品ですから、 作者も今とはずいぶん文体などは変わっていると思いますけれど。

でも、どうしても我慢できない何か所かを除いては、 そんなことは関係ないと思うくらい、世界に引きずり込まれます。 それはすごいと思います。細かい点は気になるところが目白押しですけどね。
特に、だいたいの人間関係や世界が把握できて来ると、 そこから後はただただ雪崩に巻き込まれたような感じです。

もともとこの作品は、性的な行為の描写自体は何も意味を持たない、と鈴は思います。 もしCDやビデオにそういうシーンがふんだんに克明に取り上げられているとしたら、 それは勘違いした演出による、勘違いした視聴者へのサービスでしかないでしょう。
この作品の官能は、そんなものは重要ではないからです。

エンターテインメントとしては、ちょっと重すぎるなあ、とは思います。 もしこんな作品ばかり連載されていたら、鈴はたぶん途中で力尽きます。 そのときに読むのはやめて、完結してから通して読むでしょう。 単行本としてまとめて読むから読めるんだと思います。
でもそれにしても、ちょっと汚なすぎますね、世界が。 「7月4日に生まれて」という映画を思い出します。あの、汚い映画を。

救いのないのは嫌いではない(好きかもしれない)けれど、せつなさもないので、 文章の稚拙さとも相まって、あまり読後感はよくありません。どどーん、と、 来るだけ来て終わってしまう。もっとどうにかしてよ、と叫びたくなる。

原作を読んだら、ビデオを見るのが恐くなってしまいました。 あの救いのなさがそのまま表現されたビデオだったら、 それを映像で目の前に提示されてしまったら、 打ちのめされたまま立ち上がれなくなりそうです。

なぜ自分がエンターテインメント以外のSFが得意でないのか、 というのがわかったような気がします。


「ミッドナイト・イリュージョン」(本)

「間の楔」本編の、時間的には前の話です。書かれたのは後ですが。 ガイとリキの少年の頃の話です。
やっぱり文章はしっかりして来てます。だてに数年書いていたわけではない。 とても読みやすくなっています。

でも、ガイに腹を立てた読者が多かった、ということに、少しびっくりしました。 そんなもんなんですかねぇ。鈴は、本編を読んだときから、 イアソンとリキの純愛よりも、ガイとリキのふれ合いのほうが、 ずっとずっと激しくいとおしいもののように感じたんですけど。

確かに、カセットから先に入った読者にとっては、 カセットの脚本がそういう作りだったからか、 イアソンに対する思い入れのほうが激しいのでしょう。 ガイの出番はほどんどがプッツンしてからで、主にイアソンとリキが中心ですから。
そういう人たちに、ガイとリキがどのような時を過ごして来たか、 知ってもらうために書かれた、ということです。 鈴も、是非知ってほしいと思います。

原作(「間の楔」)は、リキがスラムで暮らしているところから始まります。 つまり、スラムにいるリキがいちばんリキらしい、と思えるような描き方なんです。
だから、イアソンは、リキからスラムを取り上げた人間、という感覚が、 どうも拭えません。リキはスラムにいて、ガイたちと一緒にいるほうが、 彼らしく生きられるんだろう、と。
でも、リキはそれでも、 いちばん自分らしくあれるスラムを捨ててイアソンと一緒にいたい、と思う、 というところは、純愛だと思います。

あ、全然「ミッドナイト・イリュージョン」の感想書いてない。


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